第1話「海が呼ぶ少年」
<Aパート>
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青い海、白い砂浜、南の島へズームするカメラ。
いきなり爆発画面。
飛んでくる溶岩。
イルカ達を襲う大きなチョウチンアンコウ。
イルカ島爆発のシーンなのだが、この時点ではまだ誰も知らない・・・。
溶岩を赤いマントで避け、ピンクに輝く短剣をかざしながらイルカの背でみんなを鼓舞する緑の髪の少年。
「いいかみんなポセイドンの怪物どもに負けるな!」
ナレーション「青い海と空とさんご礁をバックに戦う不思議な少年。この少年は何者なのか。どこから来てどこへ行こうとしているのか。
この物語は遥かかなた黒潮のあらう日本の一漁村から始まる」
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サブタイトル画面。『海が呼ぶ少年』
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イルカがはねる海。
海面を漂うピンクのクラゲ。
手漕ぎの小さい船、乗っているのは吾助と一平。
(漕ぎながら)吾助「あれぇ?」
一平(その視線を追って振り返る)「あのバカタレがまたあんな所に上りやがって。やめろ!やめねーかー。」
その先には高い岬に四つんばいでよじ登る緑の髪の少年。

囃し立てる子供たち
「登ったって、飛び込めやしねーよー」
「がんばってくれよー」
「途中で落ちたって知らねーぞ」
「お兄ちゃん、がんばってー!」
「へ・・あれ以上は無理だよ。第一、村でもあの岬から飛び込んだ奴なんかいやしねーんだからよー」

一平「戻れ!戻るんだ!猪の首にのぼっちゃならねー、トリトンもどれー!(一所懸命手を振る一平)
馬鹿ヤロー、本気で飛び込むつもりかよ。やめるんだトリトン(吾助に)船をもっと岬に寄せろ」
吾助「冗談じゃねーや、渦にのまれて沖に流されるだけだよ」

上り詰めた岬の先でベストを脱ぐトリトン。
両手を広げ高い岬から海に飛び込むトリトン。「くそーっ」
渦の中に飛び込むトリトン。

心配そうなみつ子「お、お兄ちゃん・・・」

吾助「わ、わしらでさえよー泳がん所に飛び込むなんて・・・やっぱりあの子は海の申し子だで」
一平「なんだと〜、トリトンはわしの子じゃ、掛け値なしにわしの子じゃい!」
吾助「ああ、まあ、そりゃそうじゃが・・・」
一平「トリトーン、トリトーン、トリトーーーーン」
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渦を見ながら回想シーンにはいる一平。
一平ナレーション「あれは13年前のことだった。この猪の首岬の洞窟で・・・」

洞窟の奥、光る大きな貝のベッドで海草にくるまれて泣いている赤ん坊。
縄をつたって降りてきて抱き上げる一平。
一平「ああ、よしよし泣くんじゃない」
赤ん坊のいた貝の中に置かれている衣装一式が。
一平ナレーション「そこに残されていた書付で、赤ん坊の名前はトリトンであるとわしは知った」

猪の首岬の先で縄を引き上げる吾助、
吾助「や、やっぱり赤ん坊がいたのかい」
一平「ああ」
吾助「まさかお前その赤ん坊を育てようてんじゃねえだろうな」
一平「こんな所に放ってはおけめぇ」
吾助「よせ一平、こんな所に捨てられた赤ん坊は海人の赤ん坊かもしれねえや。となりゃその子はいつかは海に帰ってく子だ」
一平「海からの授かり者なら尚更大事に育てにゃなるめぇ!」
吾助「な、なんだありゃー!イルカだ!白いイルカだ」
遠くで飛び跳ねるルカー。
一平「白いイルカ・・・」

一平ナレーション「それからというもの、わしは村の連中の冷たい目を浴びながらもトリトンを育てて来たんじゃった・・・。」<回想終わり>
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岬の下で不安そうな子供達「死んじゃったんじゃねえのか」
「ばかな事を言うなよ、おいっ」

トリトンの名を呼び続けるじっちゃんの船に海の中から魚を投げ込む手。
海面にひょこっと出る得意げなトリトンの顔。
トリトン「へへ、どうだいじっちゃん」

無事を喜ぶ子供達。

一平「上がれ!トリトン。ここで泳いじゃならねぇ」
トリトン「大丈夫だよ」と海潜る。
渦のに飲み込まれるもののそこを抜けると下は穏やかな海。
トリトンの後をついていく綺麗な魚たち。
海底から浮かびあがる2体のピンクのクラゲとすれ違う。
それを見て逃げていく魚たち(トリトンは理由を知らないのでわからない)。
トリトン「へ・・魚のくせに弱虫め。まだまだ潜れるぞ」
どんどん下へ下へと潜っていくトリトン

謎の声「いけないトリトン!トリトン、それ以上潜ってはいけない!」
トリトン「誰だ!?俺の名前を呼ぶやつは?・・・・・・空耳かぁ・・・」また潜ろうとするトリトン。

スーッと姿を表す白いイルカ。トリトンの体を押し上げようとする。
トリトン「や、やめろっ・・・あー、やめろよう・・・やめろったらぁ、何するんだよ!・・・」
海面まで押し上げられるトリトン、そのまま海岸に置いて海へ戻る白イルカ。
トリトン「バカヤロー!おせっかいなイルカ、おたんこなすイルカ!バカヤロー!よくも人の事を邪魔したな」

海岸でそれを見ていた陰険そうな腰の曲がった婆さんが呟く「おっそろしい子・・・」
トリトン(聞こえてチェッとなる)「いやな婆さんだぃ。俺がなんか悪いことでもしたのかよ。」
海岸を走り去るトリトン。

一平、やっと船から降りてきて「おとよ婆さん、トリトンがこっちへ上がったようじゃが・・・知らんかね」
婆さん「恐ろしい子・・・。イルカと遊ぶような餓鬼はのう・・・恐ろしい子じゃ」
一平「え、イルカ・・・!?」
吾助「迎えにきたのかのう?」
一平「わかるもんけ、そんなこと・・」
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海面に漂うピンクのクラゲ達。
す〜っと足を一本長く伸ばし海底をコツコツとたたく。
「トリトン、見つけた・・・・」
「トリトン、見つけた・・・・」
「トリトン。見つけた・・・・」
伝わっていく伝言。

白イルカ「ポセイドンに通信してるわ!」
その一匹に体当たり(?)。それだけですぐに体がバラバラになってしまうクラゲ、しかしすでに発せられた通信は止める術がない。
白いイルカ「ああ・・・だめだわ・・・」
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食事中の一平、トリトンは無言で海の方を見ている。
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白イルカ「トリトン!見つかってしまったようです。トリトン、大西洋のポセイドンに知れたら大変なことになります!」(なんて言っても、家に帰ったトリ
トンには聞こえないよ〜ルカー)
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海岸に建つ小さな小屋(;)。夜、布団を並べて寝ているトリトンと一平
トリトン「今日のこと、まだ怒っているのかい。」
一平「今日のこと?」
トリトン「岬から飛びこんだ事さ。ねぇどうしたんだい、じっちゃん。
あの後、不思議なことがあったんだよ。白いイルカが来てさ、俺を邪魔したんだ」
一平「やっぱり・・・」(と思わず呟く)
トリトン「知ってるのか?」
一平「いや、何・・・白いイルカなんぞお前の見間違えじゃろう」
トリトン「見間違えなもんか!俺の体を散々押し戻したんだぜ」
一平「そんな馬鹿な事はねぇ!」トリトンに背を向け布団を被る一平。
トリトン「本当なんだよ!本当に押し戻したんだってばぁ」
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ピンクのクラゲ、暗い海を更に底まで沈んで通信。
水圧で平たく潰れる体。
「トリトンがいた・・・・」

それを待っていたかのような目つきの悪いタツノオトシゴ3匹(1話ではまだ体は光っていない)
「ガイ」と消える。

不気味な赤い海に緑の目が光る。ボコボコと沸く泡でその顔はよく見えない。
不気味な目「何、トリトン族の生き残りがいただと。」
「ガイ!」
不気味な目「マーカス、ドリテアに伝えよ。奴の息の根を止めよ」
「ガイ!」瞬時に姿を消していくマーカス(って、単体の名前じゃないらしい;)。

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マーカス「ガイ!ドリテア」
ドリテア「あっ、マーカス!」
マーカス「ガイ ドリテア。トリトンを倒せ!」

メドゥーサのような姿のドリテア。

ドリテア「サランドラ!サラマンドラーっ」
と、サラマンドラを呼びながら無意味に鞭で鮫を石にするドリテア;
やがてもがくように手足を動かしゆっくりと泳ぐ太古の恐竜のようなサラマンドラの巨体が姿を現す。



<Aパート>終了<Bパート>へ続く

第一話<Bパート>

漁村の海岸。
婆さんに子供達が駆け寄るって手を出す。
「はいよ、みつ子。サブにはさっきあげたじゃろうが」子供達にお菓子を配るおとよ婆さん。

「はい」自分もと手を出すトリトン。
その顔を見上げ持っていた菓子の袋を閉じる婆さん。
「わたしゃお前の緑色の髪の毛が嫌いじゃ・・・。おめえ達も遊んじゃならねぇ、遊んだら菓子はやらねぇぞ」
クッとなって一人皆に背を向けて走り出すトリトン。
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船着場の先に座り込み涙ぐむトリトン。
その先で飛び跳ねる白いイルカ。
トリトン「昨日のイルカだ・・・」
飛び跳ねるイルカ。
トリトン「くそーっ、人を馬鹿にしやがって」
何かをアピールするように飛び跳ね続ける白イルカの体が眩しく輝く。

湧き上がってくる感情。トリトンの怒りの矛先は白いイルカへと向けられる。
トリトン「よーし!」
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泳ぐトリトン「待て!このヤロー」
追いつき、背びれをつかみ後ろ向きにまたがるトリトン
トリトン「このヤロー!昨日はどうして俺の邪魔をした!?」
足で顔をはさまれた白イルカ「苦しい・・・足を離して下さい。」
トリトン「何・・・」
白いイルカ「訳をお話します。足を・・・」
思わず飛びのくトリトン、びっくり「イルカがしゃべった!」
白いイルカ「はい、あなたとならば自由にお話が出来ます」
海面に顔を出し自分で自分の頭を叩くトリトン「ふーっ、あんまり潜り過ぎたんで俺はどうかしてしまったんだ」
白いイルカ「いいえ、お話できるんですよ。」
トリトン「え・・・喋ってる!」
白いイルカ「大至急お話したいことがあるんです」

トリトンを背に乗せて泳ぎだす白イルカ。
トリトン「何するんだ、どこへ連れて行くんだよう」
白いイルカ「今は引き潮で、猪の首岬の洞窟に入れます」
トリトン『なんで俺が洞窟なんかに・・・』
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洞窟にて。
トリトン「え!?なんだって!?俺がトリトン族の子供だって!?」
白いイルカ「そうですよ」
トリトン「ばかばかしい!俺は一平爺ちゃんに育てられた漁師の子供だ」
白いイルカ「いいえ、あなたは遥か大西洋に住んでいたトリトン族の忘れ形見なんです。」
トリトン「けっ、でたらめ言うな。トリトン族なんて見た事も聞いたこともねえや」
白いイルカ「いいですか、トリトン。13年前にトリトン族は海の独裁者ポセイドン族に襲われたのですよ。」
トリトン「ポセイドン族?」
白いイルカ「はい、その時私はご両親からあなたをお預かりしてここにお連れしました。」
トリトン「俺の両親・・・?じゃあ、お前は俺の本当の親父やお袋の所へ連れて行こうってのか?」
白いイルカ「ご両親は・・・お亡くなりになったとの事です・・」
トリトン「ふん!そんな話、誰が信じるものか!」
白いイルカ「ポセイドン族は海を支配しようとしているんですよ。海の自由を守るためには貴方が必要なのです。」
トリトン「知るもんか!俺は漁師の子だ!一平爺ちゃんの子供なんだ」
白いイルカ「違います。貴方の緑色の髪の毛が何よりの証拠です。」
トリトン「髪の毛の事は言うな!!」
白いイルカ「それに・・あなたをお連れした時置いていった短剣とトリトン族の衣装が証拠です。」
トリトン「うそだ!そんな物、見た事もないや!」
白いイルカ「いいえ、きっとおじいさんのウチのどこかにある筈です」
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一目散に帰って家捜しをするトリトン。
棚の上にあった古い衣装箱を下ろそうとして台から落ちてしまうトリトン。
はずみに開いたその中には赤いマントと紫の布袋に入った短剣らしきもの。
鞘から抜くと眩しいほどマゼンダの光を放つ不思議な剣が・・・。
思わず手から落とすトリトン「白いイルカの言ったことは本当だった・・・俺は爺ちゃんとこの子じゃなかった・・・なかったんだ」
影から見ている一平。
トリトン「俺は・・・俺は・・・」
輝き続ける短剣の光を背に浴びながら外へ走り出すトリトン。

一平「トリトン!トリトンお前・・・どこへ行く?どこへ行くんじゃ!?」
トリトン「じっちゃん・・・どうして今まで隠していたんだ。どうして今まで嘘をついていたんだ!?」
一平「おめえはわしんところの子だ。おめえは・・・」トリトンの肩に手を伸ばす一平。
それを振り切るかのように走り出すトリトン。
猪の首岬の途中で泣き崩れるトリトン。
飛び跳ねる白いイルカ。
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家の中、トリトンがちらかした衣装一式をそろえる一平。
一平(吾助に)「どうやら、おめえの言ってた通りになりそうじゃよ。これがわしの運かな・・・」

突然、地震のような揺れ。
吾助「なんじゃこりゃ?」
一平「地震にしちゃあ・・」
吾助「津波の気配でもねえな」
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桃色クラゲが浮かぶ海に怪獣の顔、その目が赤く光る。

海岸ではおとよ婆さんが「一平、当たりじゃぞ!今に恐ろしい事が起こるぞ」
一平「いつも同じ事をいいよる」

海の中から突然姿を現す怪獣、海岸の人々を襲うサラマンドラ。
「うわぁ出た〜」逃げ惑う人々。
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騒ぎに気付いて岬から顔を出すトリトン「何だありゃ・・・」
海から呼びかける白イルカの声「トリトン!トリトン!トリトン!」
「トリトン、あれがポセイドンの手下です。早く逃げるんです!」
トリトン「ええ!?」
浪打際、怪獣に踏まれ飛び散った船の破片が当たって倒れる一平。
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白いイルカ「このままだと村がメチャメチャになります!早く剣と衣装をとって!」
トリトン「どこへ逃げるんだ!?」
白いイルカ「私に任せてください。」
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家に駆け込むトリトン、入ったところに揃えてある剣と衣装一式。
トリトン「じっちゃんが揃えておいてくれたんだ。」
赤いマントを握りしめるトリトン。
白いイルカ「トリトン早く!」
着替えて来たトリトン。「よーし!」手に持ったマントをつけながら走るトリトン。
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白いイルカ「早くトリトン!さ、乗って」
颯爽と飛び乗るトリトン「やぁ!」
追ってくるサラマンドラ。
トリトン「ルカー、大丈夫か?(あれ?いつルカーの名前を!?)」
トリトン「近づいてきたぞ!」
ルカー「潜りますよ」
トリトン「ルカー、まだ潜るのか?」
ルカー「はい、もう少しの辛抱です。がんばって」
トリトン「耳が痛い、胸が苦しい・・」
ルカー「我慢するんです、しっかりつかまって!」
急反転してサラマンドラを海底に激突させるルカー。
トリトン「死んだかな?」
ルカー「まだ・・・無理ですよ」
その言葉どおり、またも追ってくるサラマンドラ。
トリトン「来るぞ、ルカー。ルカー、近づいてくるよ!」
ルカー「トリトン、行きますよ!」
今度は海面に勢いよく飛び出すルカー。「ああ〜っ!」
追ってきたサラマンドラ、勢い余って岬に激突。
罅のはいる岩。
「猪の首岬が・・・」
崩れ落ちる岬。
トリトン「ルカー!岬から離れろ!」
ルカー「はい、トリトン!」渦に広がるピンクの血(?)

それを見ていた一平と手当てしていた吾助。
一平「怪獣が死んだ・・・」
海、遠くに去って行こうとしている影に気付く一平。「・・・!」
吾助「これ、動くんじゃねぇ」
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トリトン「ルカー、どこへ行くつもりなんだ?」
ルカー「トリトン、あなたのために村の人を危険な目に合わせたくないでしょう。
あなたはご自分の事を知りたくはないのですか?」
トリトン「・・・俺の秘密か・・」

海岸をふらふらと歩く一平「トリトンだ・・・トリトンのやつ行っちまいやがる・・。」

トリトン「そうか・・・陸の人間ではない俺の秘密か・・・」

一平「トリトン、トリトーン・・・」

トリトン「じっちゃん、じっちゃん・・・ごめんな、俺・・・」

一平「ト、トリトーン」溢れてくる涙。
トリトンもイルカの背で声を押し殺して泣いている。

吾助「一平・・・」
一平「行っちまいやがった・・・行っちまいやがったよ、あの馬鹿・・・」
吾助「そ、そうかい・・・行っちまったのかい」

一平「トリトンの声が聞こえねえか?」
吾助「いや・・・」
一平「あの馬鹿野郎、わしに心配かけまいと思って・・・」
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海面を漂う桃色クラゲ。
「トリトンが・・・海へ戻った」
「トリトンが・・・海へ戻った」

顔をあげれば満月。
進むトリトンの後姿。


第一話終わり。


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